第1話:バスケは身長やない

2004年3月27日、時代を変える熱き男が二人いた。
一人の名は、(株)インターシリーズでシンガーソングライターとして、歌手を
している『相葉和彦』。
もう一人の名は、大阪市の梅田駅の付近でホームレスをしている16歳の少年、
『菅山長司』。
この二人に共通して言える事は、二人とも、バスケが大好きだった。
だが、菅山には、家がない。
時々、警察に補導されるのだが、彼には、両親がいないので、養護施設に入れら
れようとしているところ、
彼は、養護施設の園長を殴って、無理矢理、養護施設から脱出するような事態が
日常茶飯事。
園長は、菅山を不幸に思ってか、何度も警察に補導される菅山長司を引き取りた
いと菅山を説得させようとする。

「高校へ行きたくないか?もし、行きたいのであれば、出身中学校に調査書を取
りに行って、編入させてあげるぞ」

「わいは、誰の手も借りへん。今までそやって、生きてきた。わいは、勝手に死
んでいった両親の事が憎くて、憎くて、しょうがないんや!」

園長の名は、北村聡。園長は、行方不明になった菅山長司の両親の事を知って、
反抗する菅山を何とか、慰めようと懸命だ。
長司の両親の名は、菅山三枝と村田遥香。実は、長司が小学校へ上がる前に別居
したまま、長司が中学校を卒業したと同時に、岐阜県の富士見台の山林で自殺し
ている。何故、両親が自殺している事を長司は、知っているのか。それは、富士
見台の展望台から、携帯で伝言があったからだ。

「中学校の卒業式に行けへんで、ごめんな。長司」

「えっ!お母さん、どこからかけてんの?」

「岐阜県の富士見台から掛けてんよ」

「ひょっとして、お父さんも一緒?」

「ええ。今日、離婚届を出してきたばかりよ」

「何で、俺に一言も相談しないんだよ!お父さんもお母さんも最低だ!」

「三枝に代わるね」

「元気にやっとるか?長司?」

「何をのんきな事ゆうとんだ!父ちゃん!二人でこれからどうするつもりだよ?」
「俺達は、二人で死のうと思ってるんだ。家が破産した事をお前も知ってるだろ?
この不況の中で倒産したアイシンク株式会社の借金が返せなくて、俺達、自殺し
ようと思ってるんだ・・・」

「俺は、どうしたらええんだよ!」

「梅田のマンションの自宅にバスケットシューズを置いてきた。バスケをしなさ
い。お前の大好きなバスケを・・・」

「出来る訳ねえだろ。明日辺り、新聞に出て、大騒ぎになるだろうし、どうやっ
て、これから難波高校通えばいいんだよ!」

「その事なら、心配せんでもええ。隣の松平さんに頼んでおいた。長司をかわい
がってくれよと・・・」

「あれ、父ちゃん!母ちゃん!」

「ツーツーツー」

友達とカラオケをして、道頓堀で酒を飲もうとした長司に不幸な電話が携帯に掛
かってきたのは、長司が中学校を卒業した3月10日の事だった。
3月11日、区役所から梅田のマンションの菅山家に差し押さえの通知がきた。
長司は、自宅にあったテーブルに置いてあった手紙を読んだ。

〈長司へ〉
〈テーブルの上にある通帳とカードを持っていきなさい。バスケはお前の財産だ
よ〉

「バスケなんて!バスケなんて!やってられるか!あほんだら!」

長司が手紙を引きちぎっていると、ピーンポーンとチャイムの音が聞こえた。

「松平です。坊ちゃん、話は両親から伺っております」

長司は、玄関から出た。

「警察には、両親は海外に旅行中で私が坊ちゃんを預かっていると説得するんで」
小声で松平さんがそう話すと、

「わいは、誰も信用せん!」

と松平さんをはねのけて、ネットカフェへと出掛けていった。
長司は、ネットカフェでいつもラグナロク・オンラインをするのが、好きだ。ラ
グナロク・オンラインとは、日本でも有数の26万人を超える程の人気を持つパ
ソコンでダウンロード出来るオンラインゲームで、彼は、2003年4月から、
このネットカフェでちょくちょくラグナロク・オンラインをやっている。
キャラ名は、『T.DANKAN』。レベル42のアーチャーだ。彼がラグナロ
ク・オンラインの中で知り合ったのが、相葉和彦だった。

〈こんw長司やけど〉

〈こんw〉

相葉和彦のキャラ名は、『PARKER』という。二人とも大好きなNBAの選
手にちなんで、つけた名前だ。

〈俺、実はバスケやめるかも分からん〉

〈何でや?また!?〉

〈実は、俺、ホームレスになってしもうて・・・〉

〈金、ないんか!?〉

〈いや、両親が残してくれた50万で何とか〉

〈それだけありゃ、十分だ。3月27日に俺、またライブやるんやけど〉

〈来てくれへんか?池袋のライブインロサつーとこでやんけど〉

〈行けたら、行くで。でも、東京は、訳分からん〉

〈ほな。わいは、これからウジ虫狩りや〉

〈うい〉

その日、ラグナロク・オンラインをして、ネットカフェを出たのは、夜中の11
時だった。長司は、近くのコンビニで弁当とスポーツ新聞を買った。12時にな
って、梅田の駅前で新聞を広げ、雑魚寝しているところで、警察に補導された。

「君、こんな時間に家帰んないで、何しとる?」

「どうでもいいだろ!!」

と警察官を突き飛ばしたところで、

「ちょっと署まで来なさい」

と連れていかれた。

「自宅は?」

「・・・・・・」

「両親の名前は?」

「・・・・・・」

「君ねぇ、黙ってちゃ、何も始まんないよ」

「両親も家もありません」

これを聞いて、警察は、マスコミに公にしようとしたが、長司が、松平さんの事
を話したので、帰らせてくれた。

「坊ちゃん、家へ来ないでいつまでもどうするつもりです?」

「孤児院か、どっかに引き取ってもらえへんか?」

「仕方ありませんね。養護施設を紹介しましょう」

こうして、入ったのが、養護施設だった。園長の北村聡は、寛大な人だった。だ
が、養護施設での決まり事が面倒臭くて、

「やってられるか!あほんだら!」

と園長を殴って出て行く事数回。万引きを繰り返し、警察に補導される事数回。
結局、その度に養護施設に戻ってくるのだ。
そして、3月27日がやって来た。園長に了解を取って、東京へ上京してきた。
池袋のライブ会場へ長司は、やって来た。そこでは、相葉和彦が歌っていた。

「バスケ好きなそこのあなたへ。バスケの神様」

バスケの神様
 
NBAに入れるなんて日本じゃ高望み
だけど憧れるのは
「バスケの神様」さ

あのマイケル・ジョーダンだって
小さな時が
どんなに挫折しても
弱気にならなければ

いつかSUCCESS
NBA in JAPAN

アメリカに渡ってチャレンジしたけれどさ
憧れのプレイヤーに
一歩も近づけず

だけど積み重ねの努力はさ
実るはずさぁ
「バスケの神様」
一体どこで見つかるの

The answer is replied
to succsess basket dream

いずれ君の挑戦が
輝く時に
楽しんでやるプレイする事
やる気になるはず

to success basket dream♪

歌い終わった相葉和彦に長司は面会を求めた。

「相葉さん。初めまして。菅山長司です。バスケ好きなんですね」

「ああ、バスケ好きの人のために歌ったからね。この曲は。バスケ本当にやめち
ゃうの?長司君」

「高校も通えないんじゃ、無理です」

「身長高いのに、もったいないなぁ」

「もういいんです。それじゃ。相葉さん。最高でした」

「じゃーね」

こうして、長司は、ライブ会場を後にした。その帰りの事である。東急百貨店の
屋上から大量のドル札が落ちてきた。

「!?」

「何だ。何だ」

長司がそのドル札を拾うと、100ドルあって、その百ドルが何枚も何枚も落ち
てくる。池袋西口は、騒然となった。もちろん、警察がやって来て、そのドル札
をばらまいた男は、取り押さえられた。長司は、

「君、お金拾わなかったかね?」

という警察官の質問を無視し、追ってくる警察官を振り払った。

「2000ドルあるぞ!」

と長司は、帰りの新幹線の中で、スポーツバックから取り出して数えた。その時、
長司の頭をある考えがよぎった。

「アメリカへ行こう」

そうバスケットの国、アメリカへ・・・



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