第3話:見えすぎた男

「知りすぎてしまう事は、時として罪となり、叫びの断末魔を呼ぶ事にもなりか
ねません。それは、真実を知りすぎた為に他人から叫ばれるよりも、自ら叫ぶ恐
怖の実体験なのです。ストーリーテラーの相葉和彦でした」

彼は、45歳のベテラン精神科医。名を財前寺清彦と言う。彼は、他の精神科医
とかなり違う際だっている面がある。患者の目を3分以上見続けると、その人の
生き様、全てが解ってしまうのである。今日も患者が一人来た。

「眠れなくて、しょうがありません。どうにかならないでしょうか?」

患者の名は、平山洋一。25歳。一流商社マンに勤めているが、不眠症でここに
来た。

「話を続けて」

財前寺は、彼の目をそらさずにしっかり見た。

「毎日、会社の仕事で忙しいうえにストレスが溜まって、眠れない日々が続くの
です。ひどい時になると、一週間は、眠れません。何度、嗚咽をした事か・・・
神経性の胃痛まで伴い、頭がおかしくなりそうです・・・」

平山が喋り終えると、「一分待ちましょう。あ、顔は、そらさずに」と財前寺は、
平山の目を見つめた。すると、財前寺の頭と目の前に、平山洋一の今までの人生
が全て映し出される。

「あなたは、いつも言いたい事を言えずに、隠れた所でネチネチ愚痴をこぼして
きましたね。それは、もう小学生の時から・・・」

「何故、それが!!」

「僕には、見えるんですよ。貴方の生き様が・・・」

財前寺と平山に妙な距離が置かれたような気が、平山洋一には、感じられた。

「また、来ます」

平山は、薬の処方箋も書いてもらわないまま、そのまま、立ち去った。
付き添いの看護婦が、

「先生、昔からそれで食ってるんですもんね。ちょっと、変わってますけどね」

クスクス笑いながら、看護婦も次の患者を呼びに言った。
いつも、財前寺は、この調子ではない。心が見えそうな患者だけには、目を見続
ける。
一日が終わった。自宅に帰ると、財前寺は、すぐベッドに横たわった。あの患者
の事だけが忘れられなかった。平山洋一。うとうと眠ってると、彼が夢の中にま
で出て来た。しかし、こんな事は、彼にとって、日常茶飯事だった・・・はずだ
った。しかし、彼は夢の中でとんでもない事実を発覚してしまった。平山洋一は、
小6の時に父親を殺して、別荘に遊びに来てたにも関わらず、母親と一緒に父親
を山奥に埋めていた。しかし、こんな馬鹿げた事実を果たして、警察が取り扱っ
てくれるだろうか?夜に目が覚めて、財前寺は、警察に110番した。

「もしもし、警察ですか?僕は、精神科医の財前寺清彦と申しますが、今日、来
た平山洋一という患者が、小6の時、父親を殺したと自供しました」

「よくも見え透いた虚言癖を吐きますね。財前寺清彦」

「虚言癖!警察のくせに真相を取り扱ってくれないんですか!」

「貴方は、他人の人生を弄ぶエゴイストだ」

「は?」

「私は、この物語のストーリーテラーの相葉和彦です。今から、貴方に二つの選
択肢を与えます。どちらかを選ぶ事で、貴方は、叫ばれるか、叫ぶか、選択肢を
迫られます。一つ、明日、また、平山洋一を診察するか、二つ目、平山洋一をマ
スコミに訴えるか。さあ、どっちを選択します?」

「ふざけるな!僕の人生を弄んでるのは、お前だろ!」

「ジェット・スクリーム!!!」

「ハ!」

財前寺は、目が覚めると、何事もなかった様に煙草を一服した。
翌日、平山洋一がまた診察に来た。彼は、いつもの様な診察はせず、

「睡眠剤出しておくからね」

と冷たくあしらった瞬間、平山の目が光ったので、思わず、3分間ジーッと顔を
見つめた。
気が付くと、彼は、吉原のソープ嬢になっていた。身も心も体も。そして、平山
に無理矢理襲われて嫌がるソープ嬢に。

「人の人生が見えすぎてしまうと、自分自身の意識も肉体と精神を超えて、すり
替わってしまう危険性だって、ありえないとは言い切れません。それが、叫びの
世界の常識なのですから」

出演者:財前寺清彦
    平山洋一
    その他吉原のソープ嬢など
    ストーリーテラー相葉和彦



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