第5話:執拗な虐め

「ばっちりだったよ。お父さん」

俊彦は、そう普通に答えた。
地元に帰ってくると、孝の出迎えが待っていた。
その後は、いつもの様に一家そろって、豪勢に食事が行われた。
入学式の日がやってきた。
俊彦は、英語科の特別進学クラスだった。
孝の妻、香織が同席していた。クラスの担任の佐藤諭吉先生の説明が始まり、香
織は、教室の後ろで待機していた。

「えー、長い受験戦争を勝ち抜いてきたみなさん、ごくろうさんです。当クラス
は、英語の特別進学クラスですが・・・」

話の途中でみんなが度肝を抜かれた。

「この学校にオール500満点で、主席で合格されたのは、山内俊彦君です。山
内君、どうかね?今の心境は?」

(堀口さんったら、もう・・・)

香織は、町長堀口氏がこんな待遇をさせたのだと、そう思った。

「別に。大した事じゃないです」

待機していた母親達が口をそろえて、

「やーね。家の子だって、出来るのに・・・」

と様々な文句が出た。
まさか、この日からクラスメイトによる執拗な虐めが起こるとは、思いもよらな
かった。
今日は、英語と数学の授業レベルのクラス分け試験の日だった。
湯原という生徒と大竹という生徒が、俊彦に対して、不満を持っていた。湯原と
大竹は、

「あいつ、生意気だから、虐めてやろうぜ」

と共同した。
俊彦の机の中は、空っぽだったが、湯原と大竹の仕業で参考書が入っていた。
試験が始まった。最初の時間は、英語の試験だった。

「先生!」

「何だ。湯原」

英語の担当の山川が湯原に注目した。

「山内君、カンニングしてます」

「山内君!」

「え、違う。違います」

「じゃあ、その空っぽの机の中にある参考書は、何かね?」

俊彦は、ただちに教室から出て行き、職員室で事情聴衆される事となった。

「君は、じゃあ、本当にカンニングしていないと言うのだね」

山川教諭がそう尋ねた。
クラスの担任、佐藤諭吉先生は、

「まあ、俊彦君は、稀にみる優秀な生徒ですし、この学校も主席で合格したので
すから、今回の事は、大目に見てやってください」

その日から、俊彦はクラスで孤立するようになった。
人間不信に陥ったのだ。
声をかけてくれる友達ができそうになったが、

「あ、そう」

の一言で人を避けた。

結局、湯原と大竹のたくらみも効かぬまま、英語も数学もトップクラスの授業に
参加する事になった。
湯原と大竹は、そんな底意地の悪いことをしただけでなく、俊彦と同じクラス編
成の教室となった。

「えー、予習は別に強制はしないのですが、早速ここを訳してもらいます。それ
じゃ、成績優秀の山内俊彦君」

「私たちは、必ずしも文字を持っているとは限らなかった・・・」

「そうです。完璧な訳ですね。みんなも山内君を見習うよう」

そして、湯原と大竹を始めとする虐めグループが、含めて5人、俊彦をトイレで
虐めにかかった。湯原と大竹がトイレの壁で、俊彦を押さえながら、

「何すんだよ。止めてよ」

「止めてよだって。聞いたか、おい。こいつオカマか?」

「君達の様な野蛮な人種が、この学校にいる事はおかしいと思います」

「こいつー!!」

その瞬間、虐めに加わっていた5人が俊彦を滅多打ちにした。

「おい、やばいんじゃないか。こいつ、このままで先公にチクッたりしないだろ
うか?」

「とりあえず、早く逃げようぜ」

俊彦は、自分が虐められている事に何も抵抗しなかった。
気絶して、起きあがった時、自分の中にあるもう一つの人格が出てきた。

「あいつら、殺す」

起きあがった俊彦は、まるで別人の様だった。
体育の授業で、担当の阿部隆行教諭が、

「あれ、おかしいな。一人いないぞ」

と言った時に事件は、始まった。
何と、俊彦が校庭にあった鉄パイプを持ち出して、
湯原と大竹に暴行を加えようとしていた。

「おい!止めろ。止めるんだ。山内!」

続く



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