第6話:未来のきかん坊

「うわー!!」

湯原と大竹は、校庭から逃げ出そうとした。

「待て、落ち着くんだ。山内君。話し合いで解決しようじゃないか」

俊彦が誰もいない所で、鉄パイプを振り下ろすと、彼は突然、我に返った。

「俺の本当の名は、山下茂雄」

「な、何を言っている。来なさい。山内君。少なくても、停学処分は考えておき
なさい」

「知らん」

「ま、待ちなさい。山内君」

「俺に逆らうと、親父が怒りますよ」

「何を言っている」

「この鉄パイプは俺の警備用に使わせてもらうぜ」

こうして、俊彦。いや、山下茂雄はその場を立ち去った。

職員室では、会議が行われていた。
湯原と大竹は、恐怖のあまり、自宅に帰らせることになった。
生活指導でもある阿部隆行教諭とクラス担任の佐藤諭吉先生、他、教頭などが参
加している。

「一体、彼は、どうしてしまったのでしょう。あんなに優秀な生徒がそんなこと
をしてしまうなんて」

「いや、やっぱり、ああいう優等生にかぎって、こういうことをするもんでしょ
う。最近の事件を見ているといつもこれだ」

「退学も考えられないこともない」

教頭がそう言うと、

「待って下さい。あの生徒は、この学校に入って、間もないですし、校長からも
大事に扱ってほしいということだったんですから」

「そうか。それじゃ、湯原君と大竹君の二人が復帰しだい、両親方も呼んで、彼
の処分を考えよう」

「やれやれ、両親なんて、呼ぶとやっかいなことになりますよ。教育委員会に訴
えるとかなって」

一方、山下茂雄(自称)は、山内家に帰って来た。

「ちょっと、あんたその鉄パイプ何?」

「っていうか、学校抜け出してどういうつもり。家は、不良はいらないわよ」

香織がそう言うと、

「おばさん、お世話になった。俺は、記憶が戻ったんで本当の家に帰ります。電
話、借りていいですか?」

「ちょっと、その前にこの前恥かかせたこと謝りなさい」

「ん?」

「入学式の日に偉そうな態度して、周りの反感かったことよ」

「ああ、あの、え、待て。俺は、何をしたって言うんだ!?」

「ううっ」

突然、彼は頭が痛くなってきた。
頭を抱え込む山下茂雄(自称)。

「俺は、どうしてここにいるんだ?」

「もういいわ。2階の自分の部屋で休んでて。孝が帰ってきたら、ゆっくり話し
ましょう」

その時、山形航空高校から電話がかかってきた。

「もしもし、担任の佐藤諭吉と申しますが、もう何となくそちらでも分かってい
るとは、思われますが、お宅の山内俊彦君が今日、校庭にあった鉄パイプでうち
の生徒に暴行を加えようとしていたということが分かったんですが・・・」

「ええっー!!俊彦がそんな事をどうもすいません。今から、学校に伺わせても
らって事情聞いて、その生徒方の両親に謝罪しようと思いますが」

「何で、そんなにしっかりした親御さんがいるのに、こういう事態になったんで
しょうね。それでは、よろしく頼みます」

「あの・・・」

「は?」

「家の子は、退学処分になりませんよね?」

「それは、俊彦君のこれからの態度によって、決まるでしょう」

「そ、そうですか・・・」

香織は、孝の携帯に電話した。

「何だい。香織。この忙しい時間帯に?」

「忙しいのは、こっちの方よ。実はね・・・」

「ええっー!!」

「今すぐ帰る」

山下茂雄(自称)は、俊彦(仮の名前)の自分の部屋をボーッと眺めていた。

「この家、もしかしたら、誰か他に子供いるんじゃねえか?」

「電話しなければ・・・」

「そういや、この携帯一度も使ってなかったな。ハハ」

それは、山下茂雄(自称)が入学祝いに孝と香織からプレゼントされた携帯だっ
た。

「もしもし・・・」

「はい。山下プロジェクト。山下哲郎だが?」

「親父か?俺、どういう訳か、山形県にいるんだ。どういう事だろう?」

「何を馬鹿な事を言っている。お前は、大体、今日は学校どうしたんだ?それと
その携帯、お前の持ち物じゃないぞ」

「え、学校って、俺は、山形航空高校行ってて。親父、すまん。どういう訳か、
記憶がないんだ・・・」

「それじゃ、お前は誰だ?」

続く



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