第7話:もう一人の山下茂雄!?

「俺だよ!茂雄に決まってるじゃないか!」

「何があったかは知らんが、家の子は学校を一度も休んだ事ないんだぞ。皆勤賞
いつももらってきてるんだからな。お前は、確かに茂雄の声とそっくりだが、本
当に茂雄なのか?」

「当たり前じゃないか。あの世界でも有数な外資系企業山下プロジェクトの御曹
司山下茂雄だよ。親父の携帯、第一関係者以外知ってる訳ないじゃないか」

「そうか。それならいいんだが、お前が学校サボるなんて初めての出来事なんだ
からな。いや、それとも学校からかけてきてるのか?」

「いや、実は俺、どうした事か、山形県にいて、山内さんという所で今まで生活
してきたんだ。親父も俺が行方不明になって、心配してただろ?」

「何を馬鹿な事を言っている。お前はずっと家で生活してただろ?頭でも打った
のか?」

「ええーっ!!じゃあ、あなたは一体誰ですか?」

「それを聞きたいのは、こっちの方だ。帰ってきたら、ゆっくり話そう。俺はこ
れから会議で忙しいからな」

山下茂雄(自称)は、訳が分からなくなった。それじゃ、自分の正体は、一体誰
なのか?
とにかく今は、山内孝に事情を話す事から始めようと思った。
しばらくして、孝が帰って来た。

「香織。ただいま。俊彦はいるか?」

「それなんだけど・・・」

「何!記憶が戻っただと。じゃあ、俺たちは、あの子を預かる義務はなくなるっ
て、ことか!!」

「というより、学校であんな不祥事を起こして、私、学校側に何て言ったら・・
・」

「今から堀口さんの所へ行こう。俊彦。いや、あいつを連れて」

孝と香織は、山下茂雄(自称)の部屋を二回ノックした。

「あ、おじさん、おばさんか。中入っていいぞ」

「俊彦!いや、それより、君の本当の名前は?」

「山下茂雄だよ。おじさん」

「そうか・・・。茂雄君。玄関にあった鉄パイプは一体どうしたんだ?」

「ああ、湯原と大竹って、奴がむかついたから、脅してやったんだ」

「帰り、警察や周りの人に怪しまれなかったか?」

「大丈夫。何とかでっかいスポーツバックに入れて、持ち帰ったから」

「そのスポーツバック、どこで手に入れたの?」

「竹藪の中に捨てられたスポーツバックで」

「その中にお金なんか入ってたりしないよね?」

「入ってたよ。でも、捨ててきた」

「大変!どうしよう。ただでさえ、こんな一大事だっていうのに」

「とにかく、茂雄君も、香織も、堀口さんの所へ急ごう」

町役場に着いた。

「堀口さん。この子の住民票登録を止めてもらいますか?」

「何を今更?山下茂雄君を誘拐しておいて」

「どういう事ですか?」

「その子は、山下プロジェクトの御曹司山下茂雄君だ。うちと知り合いなんでな」
「だましたんですね」

香織は、堀口町長の机を思い切り叩いた。

「別にいいんだよ。だまってもらえば、うちの株が上がるってもんだ」

「俺はどうなるんだよ!こら!」

山下茂雄(自称)は、堀口町長のネクタイを引っ張って脅した。

「やめなさい。茂雄君。もうこんなひどい男にだまされた俺たちが馬鹿だった」

「ふん!」

堀口町長は、ネクタイを締め直した。

「まあ、どっちにしろ、これでうちもお宅も共犯ですな」

「共犯?」

「公正証書原本不実記載罪の共謀犯だ。いや、何。このまま、お宅がその子を隠
し通して、生活するのなら、山下哲郎さんと交渉してもいいんだが」

「どこまでも汚い男だ。そうやって、また口止め料払わせる気だろう?」

その頃、山下家では、山下哲郎が本当の山下茂雄と会話してた。

「ただいま。親父。ん?どうした?」

「今日、変な電話かけてきたな。お前。あれは、一体どういう事だ?」

「何の事?」

「お前、山内家にずっと預けられてるだとか、何とか?」

「知らないよ。そんな事」

「じゃあ、あいつは一体誰だ?」

一方、堀口町長と話しても無駄だと分かった孝と香織と山下茂雄(自称)は、翌
日、学校へ謝罪に行った。
湯原家と大竹家にも謝罪に行ったが、山下茂雄(自称)が、「悪いのは、そっち
だ」と言い張る。

「まあ、家の子がいじめをしたって、言うんですか?仮にそうだとしても、お宅
のやってる事は、傷害罪ですよ。一歩間違えれば」

「すいません。この子に言い聞かせますので」

自宅に帰って来た3人。

「どうすんだ。このまま、俊彦として暮らすか?それともお家に帰るか?」

「おじさん、おばさん。本当に迷惑かけた。おじさんとおばさんがどうにかなっ
ちゃうのは辛いけど、真実を確かめたいんだ」

「よくぞ、言った。本当はお前の事離したくないんだ。だって、あんなに・・・」
続く



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