第16章:父の死

魔王オグマとの初対決でゲダロフを除く、61名の魔術軍隊は、ワトソン城へ戻
った。

「大臣様、魔王オグマは予想以上に強かったです」

ノーヴァはたどたどしい口調でそう言った。

「それでおめおめと帰って来たのか」

「すみません」

61名の魔術軍隊は、己の非力さの前に沈黙した。

「ゲダロフはどうした?」

「重傷を負っています」

とノーヴァ。

「とりあえず、ワトソン様に報告しておこう」

ワトソンと修行をしていたカンダロフは、ワトソン城の修練場にいた。またの名
を『偉大なる魔法使いウェグナーの軌跡をたどる部屋』といった。大臣がその軌
跡の部屋へと足を運んだ。
ワトソンが気づいて、

「何しに来た?修行中の邪魔じゃぞ」

と言うと、

「ご報告します。地底世界に魔王オグマがやって来ました。みな頑張ったようで
すが、ゲダロフが重傷を負いました」

「お父さんが!?」

修行をしていたカンダロフが、突如、躊躇した。

「気にしてはいかんぞ。カンダロフ。雑念を捨てねば」

「あなたには、愛情というものがないんですか!」

「ダメだ。許さんぞ、修行を放棄するのは」

「それでは、私はこれで」

「うむ」

大臣が部屋から去った。
ゲダロフは、自宅でゆっくりと静養していたが、あまり覇気がない。もう死ぬの
かもしれない。毒を帯びたサウルスゾンビの骨はいまだ体のあちこちに刺さって
いる。もはや、魔法文明では、こうした怪我に対処できない状態だ。手術の出来
る医者が必要である。

「帰らなくちゃ。お父さんが死んでしまう」

「例え、今、帰ったところでそなたの父親は、お前を許さないだろう」

「ぐ・・・ぐむ」

「お前の父親は、かつて天才児だった。その父親を修行を放棄してまで、看病し
に行くのは、きっと父親のプライドが許さないだろう」

「分かりました。修行を続けます」

カンダロフは、涙を拭いて、イメージトレーニングの続きを続けた。
ゲダロフの自宅に、妻のソンロンがワトソン城から戻ってきた。

「あなた、大丈夫」

「ごめん。俺は、もう無理かもしれない・・・」

「何を弱きな事言ってるの?コラームスの時だって、乗り越えたじゃない。死を」
「ほ、骨を抜いてくれないか」

ソンロンは、涙を流しながら、無数の骨を丁寧に抜き去った。

「魔法の包帯よ。これで少しは回復すると思うけど・・・」

「いや、もういいんだ。それよりこの手を握ってほしい」

ゲダロフの左手に謎めいたオーラが宿っていた。

「こ、これを受け取ってくれ。これで、カンダロフは、ゾン・クラピカ以外の能
力も使いこなす事ができるだろう」

「あなた・・・」

「さようなら」

ゲダロフは、ベッドの上で力尽きた。享年37歳。
ゲダロフの死は、またたく間に地底世界の住人に広まった。
大臣は、ワトソンとカンダロフを気遣い、ゲダロフの死を内緒にしていた。
さようなら。ゲダロフ。

続く


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