第2章:時の権力者ワトソン

「一体惑星パジェットでは、地球の西暦と同じ約2000年の間に何が起きてい
たのだろうか?」

この歴史の実体を地底世界でただ一人把握していたのは、偉大なる魔法使いウェ
グナーの子孫、ワトソンであった。地底世界ウェグナー(偉大なる魔法使いにち
なんで付けられた)の権力者であるワトソンの地位は、類まれなる政治力で国を
統治する魔法社会の『法王』であった。かつて法王ワトソンは先祖ウェグナーの
記した書物に従い、法を定めた。

「其の一 魔法は己の身を守るために使う物であって、国を治める権力者以外は
これを乱用してはならない」

「其の二 この地底世界は、国を統治する者にいかなる事があっても逆らっては
ならない。権力者を敬い、権力者に服従を誓う事。但し、権力者の行為が正義に
反していると判断した民衆は、己の信念に従って正義を振る舞う事」

「其の三 この地底世界を自由に創造する指令を出す者は、国の最高権力者のみ」
「其の四 魔法を使える素質のある者は、義務教育として魔法使い養成所に入学
する事を認める」

「其の五 地底世界を脅かす者、例えば、侵略者達に対しては一致団結して魔法
自衛権を駆使し、最高権力者はその魔術軍隊に指令を出す事」

これら五つの法が基本憲法であり、民法、商法、刑法など地球の日本憲法を魔法
文明に変えた様なものが、国の礎となっていた。
ウェグナーの記した書物には、以下のような事も書かれていた。

「この広大な銀河には、同じような過ちを繰り返していた星がきっとどこかにあ
る。私の思念では惑星パジェットが犯した罪と罰が存在していたのと同じ星は、
無惨な人殺しを繰り返し、科学や機械文明に置いて生物が自然淘汰された青い星
がかつて存在していた事が読み取れる。その星の名はきっと地球と言うだろう」

そうなのだ。いつだって、地球は同じ事の繰り返しだ。何億と言う年月を越し、
西暦を21世紀に迎えた地球も、アメリカのような支配者が戦争を『正義』とい
う偽りの行為で行おうとしている。
この事実を知ってしまったのは、法王ワトソンであり、ウェグナーの書物を密か
に管理していた側近オグマと対決し、彼から奪い去ったのもワトソンであった。
2000年という時の中で、地上世界も地底世界も文明は違えど、やってる事は
同じ事の繰り返しだったのだ。地底世界ウェグナーが『正義』という名のエゴイ
ズムで魔法自衛権を駆使している事がモラルだとしても・・・・・・
そう言った意味では法王ワトソンは、時の権力者であり、偉大なる魔法使いウェ
グナーの血を受け継いだ最高のリーダーだった。
彼がオグマと対決した時、戦った最高の魔法は禁断の魔法「ゾン・クラピカ」だ
った。しかし、この魔法はウェグナーでも操れなかった最高高等魔術であり、無
論彼にも操り切れなかった。この勝負の行方を知る者は、この二人以外誰も知ら
なかったし、書物のような歴史を刻むような物にも知るよしはなった。オグマか
らウェグナーの書物を奪い去ったという事以外は、歴史の彼方に消え去って埋も
れている・・・・・・いつしかこの無益な文明改革戦争「魔大戦」を終わらせる
ための魔法「ゾン・クラピカ」の秘密をワトソンの口から聞こうとする勇気のあ
る魔法使いが「魔法使い養成所」から現れる時までは。

続く


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