第5章:冒険者たち

マジシャンズ・クリエイトシステムが採用されてから、魔法使い養成所の様子が
慌ただしくなった。それまで、2年かけて卒業する体制のはずが、6ヶ月で卒業
という事になった。しかも、法王ワトソンの思案により、優秀な魔法使いのみを
卒業させる卒業テストがある。この卒業テストをいち早く受ける事になったのが、
ゲダロフだが、ワトソンの思案としては、2年間で24人の優秀な魔法使いを育
てあげ、オグマ軍に対抗するための魔術軍隊を編成したがっていた。
ゲダロフの冒険が始まった。ゲダロフがほうきを使わないで、舞空術を使おうと
すると、魔法使い養成所の校長ミトラーは、

「何事も基礎が大事です。このほうきを使って、空を飛んでください」

と、薄汚れた汚いほうきを差し出した。

「何だよ、これ!こんな物で空を飛べるかぁ!!」

と怒り心頭だった。だが、ミトラーは、

「これも修行の一つです。ゲダロフ君は、この世の中を甘くみてます。世の中は、
狭いようで、実は広い。何といっても、この世の中は、地底世界ウェグナーだけ
じゃないのですから」

「もし、俺がこのほうきを使わないで空を飛ぶとしたら?」

「別に罰は、与えません。修行の中止もしません。ですが、これから始まる貴重
な経験は、きっと、これから始まる戦争に役に立つでしょう」

「ちぇっ、俺がその戦争の中で勝った暁には、俺を校長にしてもらうからな」

こうして、ゲダロフは魔法使い養成所の側にあるアンシャンテの森を超えて、ほ
うきで空を飛んでった。トロルマスターの支配する塔は、雷の魔法パラが使える
ゲダロフにとって、たやすいものだった。だが、雷の魔法パラを使うためには、
あらかじめ用意された魔法陣を敷き、パラスタッフが必要だった。ゲダロフは、
家宝であるパラスタッフを父の目を盗んで、無断で持ち出したので、心配は無用
だった。1階には、ゴブリンの集団がいて、2階には、ホブゴブリンの集団がい
た。そして、3階には、オークの集団、最上階には、トロルの集団がいて、トロ
ルマスターが支配しているといった具合だ。ゲダロフは、3匹のゴブリンを舞空
術で交わしながら、ナイフを投げつけて、倒すと校長から渡された卒業テストの
メモを見た。

「卒業テストを受ける者へ。あなたは、これから多くのモンスターと出会すこと
となるでしょう。その際に注意があります。これから出会すモンスターは、捕獲
する事。モンスターをおとなしく降伏させる魔法は、『キグダム・パスト』です。
この呪文と共に物体を小さくさせる魔法『チンジャー』を使って、モンスターを
袋の中にでも入れて、捕獲してください。なお、捕獲するモンスターは1種族と
する事。ゲダロフ君、あなたの幸運を祈っております。ミトラーより。」

「げっ!俺、こんな魔法使えないよ。何、考えてるんだ、あの校長」

何もかもうまくいっていたゲダロフに焦りの表情が見えた。そして、その魔法を
会得するのに、3日かかった。

「ようやくできたぜ、全くやらかしてくれるよ、あの校長」

普通なら、魔法使い養成所で教えてくれるその魔法を3日で会得した、ゲダロフ
は、やはり天才児だった。歳は、まだ12歳。これからが楽しみな魔法使いだっ
た。彼は、1階で費やした時間を無駄にせず、いっきに3階まで上がっていって、
空気の実を手に入れ、『パラケル』という魔法も会得していった。『パラケル』
は、雷の竜巻が舞う機械兵器を壊すのには、うってつけの魔法だ。最上階に来て、
ゲダロフは、

「この袋はいらねえな」

と、捕獲したゴブリンの袋を捨て、トロル達の集団を50匹捕獲した。その後、
もちろん、トロルマスターをパラケルの魔法で倒し、卒業テストを終了している。
結局、2年間で厳しい卒業テストをクリアした者は、ゲダロフを含む8人の冒険
者たちのみだった。マジシャンズ・クリエイトシステムが採用されてから、卒業
のための魔法論文を書かせるといった体制が無くなり、大臣から、法王ワトソン
へ、

「いいのですか。魔法論文を書く生徒がいなくなっては、知識も教養もない魔法
使いが出て行くだけですよ」

「ゲダロフを始め、8人の戦闘能力を秘めた魔法使いが巣立ってくれた。知識や
教養は、冒険の中で得たもので十分だ。あとは、本を読んでそれを学べばよい」

こうして、捕獲されたモンスター50匹と優秀な魔法使い8人による魔術軍隊が
結成された。

続く


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