注意書き:この作品は、原作となる相葉和彦の作品をより、奥深いものにさせる
ために、書きました。よって、読者の皆さんには、原作のマジシャンズ・クリエ
イトを読んでから、この作品をお読みくださいませ。

第1章:惑星パジェット

500万年後の地球について、あなたは、どう思われるだろう?500万年後の
地球は、おそらく、氷河期が到来していて、北半球のかなりの部分は氷に被われ、
地中海は干上がる。1億年後、氷河の時代は終わり、世界的に海水面が上昇する。
オーストラリア大陸はアジア大陸とぶつかり、南極はその位置を移動している。
2億年後、分かれていた大陸が一つとなり、巨大な超大陸の第2パンゲアとなる。
地球上には、この広大な大陸と、それをとりまく「地球海」という大洋だけしか
なくなる。(ドゥーガル・ディクソン著、ジョン・アダムス著、フューチャー・
イズ・ワイルドより)
これは、その地球上の歴史(21世紀より)からいうと、10億年後の遠い未来
の惑星の話。銀河の遙か彼方に惑星パジェットという星がありました。この惑星
パジェットも地球のような太陽系に位置する銀河系であった。もっとも、太陽系
と違うのは、惑星パジェットは、ダンブ座(惑星パジェットを取り巻く、銀河系
の星座を古くから住むパジェット人によって、発見された星座)の46番星とい
う恒星によって、造られたガス惑星だった。ダンブとは、パジェット人が愛用し
ている携帯用石炭の形が、パジェット人の顔に似ていて、パジェット人が「ダン
ブ、ダンブ!」と叫んだところにちなんで、作られた名前だ。パジェット人のほ
とんどは、パジェット語しか、喋れず、パジェット人自体、会話も性格も変わっ
た人種だった。パジェット人の顔は、ラクダに似ている。服装は、パジェット人
のデザイナーによって、作られる。惑星パジェットはガス惑星のため、住んでい
る人種も限られていた。魔法が使えるヒューマノイド、ウェグナー人とパジェッ
ト人の二種族しか存在していなかった。ウェグナー人の指導者は、偉大なる魔法
使いウェグナーで、全ての魔法と知識、教養、カリスマ性、人格が備わっていた、
ウェグナー人の神として、あがめられていた。その一方で、パジェット人は、気
が弱く、ウェグナー人に従って、生きてきた。惑星パジェットの大陸は、3つし
かないが、人種が少ないため、その分、繁栄していた。惑星パジェットの首都は、
大陸ウェグナードにあり、首都の名もパジェットと言い、中心街の中枢にパジェ
ットタワーがそびえ立つ。その建物の長さ、およそ、60メートル。その首都パ
ジェットをたくさんのウェグナー人が行き交っている。ほうきにまたがって、会
話している者達。そのウェグナー人の魔法使いの一人が、空中で、

「今日は、パーティーがあるらしいぜ」

と言うと、もう一人の魔法使いが、

「これだけのガスの中で、生きてこれたのも、偉大なる魔法使い様、ウェグナー
様のあってのものだ。今日は、パーティーで、ウェグナー様にその事を感謝しな
ければ」

地上では、物々交換を行っている、ウェグナー人とパジェット人。この星に、お
金という概念はない。政治経済、文明全てが、魔法とコミュニケーションのみで
行われているのだ。
パジェットタワー内には、惑星パジェットの権力者、ウェグナーが宮廷内の王座
に座っている。ウェグナーは、台形の台の横側に柱がそれぞれ左右に建っている
うちの中心の王座の椅子に座っているのだ。ウェグナーの両脇には、大臣サンバ
ナと秘書マサゲティが立っている。宮廷魔術師の一人、ナンがウェグナーのいる
大広間にやって来た。宮廷魔術師とは、権力者によって、認められた高等魔術者
で、宮廷にやって来ては、惑星パジェットの文明の変化を報告しに来るのだ。ナ
ンが、

「ウェグナー様、今日は、惑星パジェットの、生誕2億周年のパーティーの日で
すね」

「いかにも。この星が誕生してから、今日は2億周年目だ。勉強してますね。ナ
ンさん」

「お褒めの言葉、光栄です。マラル海から捕れた雷魚とワイン工場から生産され
たワインとユニコーンの肉を使って、贅沢なディナーにしましょう!」

すると、サンバナが、

「ナンさん。今年は、生産高はいくつですか?」

「カラロス!」

ナンがカラロスの魔法を唱えると、ナンとウェグナー達の目の前にホログラフィ
ーの映像が映し出された。ワイン工場内で働くパジェット人の映像とワイン工場
内に貯蔵されたワインの数が次々と映し出される。
ワイン工場内でパジェット人が、

「今日、疲れた。でも、これでウェグナー様、助かる。私、貢献した。嬉しい」

喋りながら、働いている映像が見える。

「カラロス!カラロス!」

続いて、ユニコーン牧場、マラル海の映像が映し出される。
その映像の中で、ウェグナー人、パジェット人がそれぞれ、

「サステ!」

と火の魔法を使い、生きたユニコーンを焼いている映像や、

「釣れた!私、愉快!痛快!雷魚釣れた」

と、マラル海での漁業の映像が。

「いかがですか?ウェグナー様。今年は、雷魚が3万匹、ワインが5万個、ユニ
コーンが2万匹捕獲出来ました」

「ごくろう。ナンさん。マサゲティさん。今の情報を解析してみてください」

とサンバナが言うと、

「えー、この惑星の大気が不安定なガスに包まれているため、今後の生産高は、
ウェグナー様の大気を浄化させる魔法にかかってますが、それでも、捕獲率の見
込みは、75%でしょう」

「うむ。ごくろうじゃった。生産に協力してくれた全ての魔法使い達とパジェッ
ト人を呼んで、盛大なパーティーにしましょう」

とウェグナーが締めくくった。
こうして、パジェットタワーには、次々と三大陸から、パーティーの参加者が集
っていった。パジェットタワーの前には、約3500人程の列が並んでいた。
だが、この時、ウェグナーも並んでいたウェグナー人もパジェット人も時代が変
化しようとしている兆候に気づいていなかった。ごくわずかのパジェット人を除
いては。そのごくわずかなパジェット人をマッド・サイエンティスト達と言った。
天才的な頭脳を持ちつつ、自分の能力に酔いしれた負けん気の強いパジェット人
が惑星パジェットの三大陸から外れた孤島に秘密基地を作り、毒ガスや生物兵器、
ミサイル弾、ロケットなど、魔法文明とは、ほど遠いい、機械・科学文明を造り
あげる計画を持っていた事など、権力者、ウェグナーの力を持ってしても、掌握
していなかった。完全なる誤算だった。
マッド・サイエンティスト達が築きあげた秘密基地で、マッド・サイエンティス
トのボス、クルーザは、

「この世界は、何もかも間違っている。きっと、この広大な宇宙には、我々と同
じアイデンティティーを持った革命者達の住む惑星があるはずだ」

これが、地球の事を指しているのかは、解らないし、この惑星パジェットは、地
球の21世紀までの歴史から、10億年後の未来の惑星なのだから、地球の人類
がどう滅んでいったかは、天変地異以外に何があったのかは、まだ、この惑星パ
ジェットも知りようがない。だが、地球がやって来た文明の崩壊、『戦争』とい
うものをこの惑星でも起ころうとしていた事は、流暢にパーティーなどやってい
るウェグナー共々も知ろうとしなかったし、予測さえしていなかった。だが、ウ
ェグナーは、感じていた。

(この魔法文明もやがて、崩壊するような謀反者が現れるやもしれん・・・)

それが、魔法使い達による裏切りであろうと、科学者達による裏切りにせよ、こ
の惑星パジェットに文明の危機が訪れようとしている事をウェグナーは、恐れて
いた。パーティーが始まった。約3500人のうち、整理券を配られて、大広間
に入ったウェグナー人とパジェット人は、約400名に絞られた。

「今日は、惑星パジェットの生誕2億周年披露パーティーに参加してくれた皆の
者に感謝する。だが、これだけは、言っておかなければならない。我が国民は、
これから、何があっても、無益な争いを起こして、魔法を乱用したり、人種の差
別をしてはならぬ。前置きは長くなったが、惑星パジェットの未来と繁栄を祝っ
て、かんぱーい!」

ウェグナーがそう挨拶をすると、火の魔法、サステで打ち上げられた花火が一斉
に打ち上げられた。花火を連発していたのは、パジェットタワーの外で警備をし
ていた宮廷魔術師のナンだった。

「今日、パーティーに参加出来なかった皆さん。この花火を見ながら、一緒に祝
いましょう!」

「ワーッ!!!」

パジェットタワーに残念ながら、入れなかった列の者達が歓喜の声をあげた。そ
れと同時に、宮廷内でも、約400名の参加者が、

「かんぱーい!」

と喜んで、パーティーを祝った・・・その時、パジェット中心街に轟音が響いた。
「何事です!?」

慌てふためくパーティー場と、ナンを始めとするタワーの外にたむろしている国
民達。

「カラロス!」

とナンは、東にある都市サルクから聞こえた爆発音の現状を突き止めるべく、サ
ルクの映像を捉えた。

「何と・・・!?」

映像に映っていたのは、見たことのない人種とミサイルが打ち込まれて、廃墟と
化した都市の姿だった。

「お母さん!お母さん!」

子供が焼死体となった母親をさすっている。

「死ね!」

そう言って、マシンガンでパジェット人の子供を撃ち殺したのは、マッド・サイ
エンティスト達によって、造られたアンドロイドだった。アンドロイドは、重厚
なプラチナベストを着ていた。

「許せない!ウェグナー様、聞こえますか?」

テレパシーのような念をナンは、ウェグナーに送った。

(言わずとも、解っておる。あれは、おそらくパジェット人の一部が造りあげた
未知なる戦闘部隊だろう。だが、私はあれがどんな戦力であるのか、さっぱり、
解らん)

(私も、あんな部隊見た事ありません。と言うか、今まで戦という概念がなかっ
たこの世界に戦が起きようとしているなんて、許されません!)

そうナンは、念を送ると、ほうきを手品のように、何もない所から出して、サル
クへと向かって行った。ウェグナーが、

(待て!待つんじゃ。未知なる者に触れてはならん!)

と念を送ったのだが、ナンは命令を無視した。
10分後、ナンは、サルクに到着した。そこには、マッド・サイエンティストの
ボス、クルーザが、100人のアンドロイドの先頭に立っていた。
ほうきから降りたナンは、身震いもせず、果敢に未知なる軍隊に対して身構えて
いる。

「ようこそ、時代遅れの魔法使い君。私が新しい文明の改革者、クルーザです」

「お前は、パジェット人なのか?そして、その後ろにいる軍隊は何だ?」

「質問をします。今から私の言う事に耳を傾けてください。ウェグナー人による
魔法文明よりも、私共の作った科学文明の方が叡智に優れていると思いませんか?
もし、そう思うのであれば、私達に協力してください。ただし、魔法の使えるウ
ェグナー人は、全て奴隷となって、私共の文明に貢献してください」

「何を言うかと思えば」

ナンは不敵に笑った。

「訳の分からない裏切り者のパジェット人達など、私がこの世から消し去ってく
れるわ!くらえ、サステリアス!」

クルーザを灼熱の炎の連弾が包んだ。
燃えるクルーザ。次の瞬間、炎が消えた。

「だから、愚かだと言うのです。ウェグナー人は。私の皮膚は、1億度の高熱に
耐えられる皮膚で出来ており、体の中に消化装置がついているのです」

「何!そんな馬鹿な!」

「今度は、こっちの番です。者共、バイオバスターの準備を!」

100人のアンドロイド達が、バイオバスターと呼ばれる武器をナンに向けて、
投げた。バイオバスターは、細菌ガスがセットされている手榴弾だ。一瞬でナン
は、ウィルスに冒されて、即死した。

(ナンが死んだ・・・)

ウェグナーは、パーティーにいる全員に対して、大声を上げた。

「今から、重大な事を述べる。ここにいるだけの魔法が使えるウェグナー人全て
は、私がこれから連れていく地下の秘密基地に避難するのだ」

混乱するパジェット人。そして、ウェグナーに疑問を抱くウェグナー人。大臣サ
ンバナと秘書のマサゲティが、

「詳しく説明してください!ウェグナー様!パジェット人を置き去りにして、我
々、ウェグナー人を地下に避難させるとは、どういう事です?」

「 パジェット人が混乱しています。ただでさえ、気の弱い人種なのに、これは
おかしいんじゃないですか?そして、外では、何が起こっているのですか?」

「説明している暇はない。ウェグナー人よ、今すぐ、避難するのだ!」

すると、ウェグナー人の一人が、オドオドしてるパジェット人に声をかけた。

「悪いな。ウェグナー様の命令だ」

「俺、何か、悪い事した?」

こうして、ウェグナーとパーティー内にいた全てのウェグナー人は、ウェグナー
の言う秘密基地へと向かっていった。

続く


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